社殿のない神社
畝畑という2世帯しかない山奥の集落にある神社です。熊野川に注ぐ赤木川の支流・和田川が大きく曲がっている所にあります。
この神社は、とある神主さんから「熊野の聖地100選に推薦したい神社があります」というメールをいただいて、教えていただいた神社です。
以下は、とある神主さんからのメールの内容(文章も画像も)です。
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田辺市熊野本宮大社旧社地大斎原や同町皆瀬川の八川神社の雰囲気に似ているように思う。
県道44号線を小口へ。小口自然の家の辺りから、畝畑方面に向かう県道229号線に入る。
和田川沿いに20分程車で進むと、畝畑の集落の少し手前のカーブから川へ降りる歩道がある。
吊り橋を横目に川沿いの道を5分程歩く。
右手に現れる石階段を上がる。
丸石を祀った石組み、その前には斎庭が広がる。
丸石には茅輪のようなものが掛けられている。
手水鉢には、「当村倉谷口ヨリ大原川筋四十日廻迄石破河造リ致候 施主中村文之助 明治十三年庚辰五月□日」と陰刻してある。
熊野川町教育委員会2003「町史研究資料 その12 熊野川町の民俗 地域の行事編」1 神社関係の行事(1)地域ごとの事例、畝畑の段には、「…新暦の十二月一日に祭りをした。…昔は祭りに討ち捕ったシシ(イノシシ)を木の枝にぶら下げて供えたという。…祭りは昭和40年ごろまで行っていたが、今でも個人が一人でまつっている。神社はもともとは大森にあったが、いつのころか宮地氏の山に下げてきた。」とある。
ご祭神は不明のようだ。高倉下命であろうか。
熊野川町内の神社は、十二月一日を祭りの日としているところが多かったようだ。また、社殿を設けず、石組みだけがある神社として、同町内では鎌塚と滝本の高倉神社が挙げられる。
熊野地方一帯には、社殿を設けずに木々・石・空間等を御神体として祀る、信仰の場所が散在する。なかには社殿を設けることがタブーとなっている場所もある。
古くからの信仰を伝えているものなのか、合祀した結果社殿がなくなったのか、温暖湿潤な気候により維持するのが困難なため設けなかったのか、あるいは設ける資産が無かったのか、わからない。
山梨の丸石神や沖縄のビジュル信仰と比較すると面白いかもしれない。
アクセス:和歌山県新宮市熊野川町西の交差点から車で約20分
駐車場:駐車場はないが、カーブの路肩に1台分の駐車スペースあり
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このメールを頼りに実際に訪れてみましたが、やはり神聖さを感じさせる場所でした。
周囲はまだ若い人工林で、大きな岩や大きな木などもないのですが、たしかにここは神聖な場所なのだと感じることができました。
社殿はなく、代わりに石積みの壇が7つあります。
小口から畝畑への県道229号線は道幅が狭いので、走行には十分気を付けてください。運転に自信のない方は止めておいた方がいいと思います。
駐車スペースに関しては、歩道入口を過ぎて数十メートル行った所にも2台分ほど駐車スペースがあります。
車道、歩道ともに和田川沿いを進みますが、和田川の美しさは素晴らしいです。
(とある神主さん&てつ)
2012.11.30 UP
2020.3.22 更新
参考文献
- 熊野川町教育委員会2003「町史研究資料 その12 熊野川町の民俗 地域の行事編」
鼻白の滝へ
アクセス:JR新宮駅から車で約1時間、徒歩10分
駐車場:駐車スペースあり