おっぱいの神様、豊かな乳房を思わせる天然の石
音無川沿いの道を500mほど熊野本宮大社旧社地から遡ったところに「ちごの谷」という支流がありますが、その谷を100mほど入っていくと、乳子大師(ちごだいし)あるいは子安弘法といわれる石仏(地蔵坐像)を祀った場所があります。
この石仏の上の岩壁には 張りのある豊かな乳房を思わせる2つの丸い石が並んでいます。
それら2つの石は人為的に作ったものではなく、自然に出現したものです。
これは「ちちさま」と呼ばれ、乳の少ない婦人が立願すると乳が出るようになると伝えられています。粉ミルクのない時代、それは切実な母の祈りであったことでしょう。母乳に見立てられた長さ1尺の12本の白い糸に餅や菓子を添えてお供えしてお願いしたそうです。現在も「おっぱいの神様」「子育ての神」として信仰されます。
『紀伊続風土記』の本宮村の項には次のように記されています(現代語訳てつ)。
○ちごら石
音無川の上の山中にある。縦4間横6間の石である。真ん中に乳の形が2つある。乳の少ない婦人が立願すれば自然に乳が出ると言い伝える。
「ちごら石」は漢字では「乳古良石」と書いたようです。
向かって右の丸石の直径はおよそ46cm、向かって左の直径はおよそ40cm。2つの丸石の間の距離はおよそ12cm。
ほぼ同じ大きさの整った丸石が女性の乳房のように2つ横に並んでいることは、奇跡的。女性の胸は通常、左胸の方が大きいですが、ちちさまも左胸(向かって右)の方が大きく、自然の造形の不思議を感じさせられます。
各地に「乳岩」などの名で呼ばれる岩はあるが、これほど見事な乳の岩は他にないのではと思われます。 巨乳の女性の、胸が垂れないようにとの願いも聞き入れてくれそうな感じがします。
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ketunoriさんが激写してくれました!
いいアングルです!
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ちちさまの前を流れる「ちごの谷」が旧本宮村と旧三里村の堺でした。
地質学的には、ちちさまは5,000万年前に海溝付近の深海に砂や泥が積もってできた音無川層群(古第三紀の付加体)に存在するノジュール。2015年に「日本の奇岩百景」に登録されました。
動画
2分40秒ほどの動画です。ぜひご覧ください。
(てつ、写真はてつ&そま。ページ中程の1枚はketunoriさん)
2003.3.30 UP
2010.11.7 更新
2010.11.13 更新
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2015.12.20 更新
参考文献
- 『紀伊続風土記 (第1-5輯)』臨川書店
- 松本勤『本宮村あちこち』
ちちさまへ
アクセス:JR新宮駅から熊野交通バスなどで1時間15分、本宮大社前バス停下車、徒歩約20分
駐車場:駐車場はないが、駐車スペースあり