左甚五郎の弟子の鼻を
熊野古道「大日越え」にある鼻欠地蔵の伝説。
左甚五郎(ひだりじんごろう:江戸初期の彫刻師、1594~1651)が湯の峰に仕事に来ていた。本宮に泊まり、大日越え(湯の峰と本宮を結ぶ熊野古道。大日峠を越える)で湯の峰に通っていた。弟子は甚五郎の弁当を持って大日峠を越え、弁当を甚五郎に届けていたが、毎日、峠にあるお地蔵さまに弁当を一箸分供えて師匠の安全を祈っていた。
それを知らぬ甚五郎はいつも一箸分弁当が減っているのを、弟子が盗み食いしていると勘違いし、ある日、些細なことを理由にその弁当持ちの弟子の鼻をチョンナ(木材をはつる大工道具)で削いでしまった。弟子は血まみれでその場を逃げ出す。
その日の夕方、仕事を終えた甚五郎は、やり過ぎたことを悔やみながら、峠にさしかかると、そこのお地蔵さまの鼻がまるでチョンナで削がれたように欠けており、血が流れていたという。
(てつ)
2005.3.22 UP
2022.7.18 更新
参考文献
- くまの文庫2『熊野中辺路 伝説(上)』熊野中辺路刊行会
- 乾克己・小池正胤・志村有弘・高橋貢・鳥越文蔵 編『日本伝奇伝説大事典』角川書店
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