もう一度日本人は熊野を想起すべき
熊野を解説した本のうちで、この本は、私のなかではすでに古典となっています。1991年に購入し、以後、何度も何度も読み返しているので、私の手許にあるこの本はもうぼろぼろ。これからも何度も読み返すことでしょう。
古代・中世・近世の熊野についてのあらましがざっと書かれた本で、写真も多く、文章も読みやすいので、格好の熊野入門書です。
梅原猛氏は新宮の神倉神社のお燈祭りに参加したことがあり、「この御燈祭ほど私を感激させた祭はない」とこの本に記しているのが(114頁)、なにか嬉しいです(私自身はお燈祭には参加したことはないのですが)。
日本の原郷、日本人の精神文化の拠り所、日本人の心のふるさとであった熊野。
この本の最後の一段落を引用します。
熊野古道は今はさびれている。もうここを旅する人はほとんどいない。しかし私は、今はもう一度日本人は熊野を想起すべき時であると思う。古代と中世の接点の時に、人はルネッサンスのごとく太古への回帰、自然への回帰の情熱に駆られてこの熊野へ蟻のごとく参った。今、文明は再び太古と自然へ帰ることを要求しているのではないか。また、第二の蟻の熊野詣が始まる時期が来ているように思う。(119頁)
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(てつ)
2004.8.5 UP
2019.10.12 更新