熊野神降臨のために居場所を失った熊野の地主神
『諸山縁起』より。役小角が発心門で出会った老人から聞いた話。
熊野の地主神麁乱神(そらんしん? そらんじん?)は、熊野権現が来臨したため、居場所を失った。
そこで麁乱神は発心門・滝尻・切目に出没して、熊野から帰る参詣者の生気を奪い取ろうとしている。
それを防ぐには顔の左右に檀香や大豆香の粉をつけるといい。これは南岳大師慧思(えし。中国天台の第二祖)の弟子一深仙人伝来の秘法。
この他、梛の葉や松の木にも麁乱神をさける力がある。
滝尻の上は諸仏諸神が長く住んでいる土地なので、 麁乱神は現われない。滝尻でこれらの諸仏諸神に毎日1度供物を供えれば善生を得ることができるという。
熊野の参詣者は、本宮で梛の葉と牛王と大豆粉を授けられて進発しました。
(てつ)
2010.2.1 UP
参考文献
- 宮家準『熊野修験』 (日本歴史叢書48)吉川弘文堂