■ 熊野の歌

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◆ 秋津野、秋津


 「秋津野(あきづの)」は和歌山県田辺市秋津町説と奈良県吉野郡説があり、熊野と吉野の両方に「秋津野」があったと考えるのが妥当なようです。ここでは熊野の「秋津野」と思われる歌のみをご紹介します。

『万葉集』より4首(うち1首は「秋津」)。

1.作者不詳。

常ならぬ人国山(ひとくにやま)秋津野のかきつはたをし 夢(いめ)に見しかも

巻第七 譬喩歌 草に寄する 1345・新1349)

(訳)人国山の秋津野に生えるかきつばたを夢に見たことだ。
「人国山のかきつばた」とは人妻のこと。
人妻に恋をしてしまった男の歌。
「人国山」は和歌山県田辺市上秋津にある山。

2.作者不詳。

岩倉の小野ゆ秋津に立ちわたる 雲にしもあれや 時をし待たむ

巻第七 譬喩歌 雲に寄する 1368・新1372)

(訳)岩倉の小野から秋津にかけて立ちわたる雲でもないのに、あなたは時が来るのを待つのですか。
「岩倉の小野」は田辺市秋津町の宝満寺のある岩倉山か。

3.作者不詳。

秋津野を人の懸くれば 朝撒きし君が思ほえて嘆きはやまず

巻第七 挽歌 1405・新1409)

(訳)秋津野という言葉を人が口にすると、朝、遺骨を撒いたあなたのことが思われて、嘆きはやまないことだ。

4.作者不詳。

秋津野に朝居(ゐ)る雲の失せゆけば 昨日も今日もなき人思ほゆ

巻第七 挽歌 1406・新1410)

(訳)秋津野に朝から立ちこめていた雲が消えていくと、昨日も今日も亡くなった人のことが思われることだ。 
雲を火葬の煙に見立てた歌。

 3・4の歌から熊野の「秋津野」は、火葬の場所であったことが推察されますが、実際、田辺市秋津町近辺からは火葬墳墓跡や窯跡が発見されています。

(てつ)

2003.7.10 UP

 ◆ 参考文献

伊藤博校注『万葉集―「新編国歌大観」準拠版 (上巻)』角川文庫
桜井満訳注『万葉集(中)』旺文社文庫

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■「秋津野」が登場する歌:
万葉集…3首

■「秋津」が登場する歌:
万葉集…1首

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