熊野権現天満宮両神社
千葉県柏市藤ヶ谷新田4-1
国道16号線(R16)藤ケ谷新田の交差点を東に行き、
次の信号「熊野神社前」交差点の右手。
柏市南東部沼南地域は、国道を外れると市街地が疎らで、
関東平野らしい広大な田園風景が広がり、ところどころ遺された森が点在する。
森の中にはそれぞれ慎ましやかに寺社が潜み、いずれも小綺麗に清められた境内がある。
地図で見る限り、この「熊野神社」もそうした社の一つかと思いきや、ちょっと様子が違う。
まず周辺の藤ヶ谷新田は、その名に反して水田はあまりなく、どちらかというと畑地が多い。
そして何より残された緑のボリュームが違う。
丈の高い広葉樹が丘陵のように視界に迫り、緑に包まれているような安心感を覚える。
見渡す限りの水田に視界を遮るもののない典型的関東平野の風景よりも、
和歌山県で出会う光景に似ている。
この熊野神社自体も広葉樹の巨木に守られるようにして拝されている。
昼間でも表参道は薄暗く「熊野」の雰囲気を醸している。
なかでも拝殿の手前に二本並んだ銀杏の木が巨大であった。
拝殿と本殿が二重の構図で前後に並んでいる。
普段は表に面した拝殿へのお参りのみで、裏側の本殿には立ち入ることができない。
拝殿には二羽の烏が向かい合う格好で彫られてある。
広葉樹が繁る境内は広く、森自体は参道前の道を挟んださらに南側へも広がっている。
特筆すべきは、この熊野神社は元々神社だけであったらしく
近くに(神仏分離以前一体であった)仏閣仏殿が存在しないのだが、
それでいて本殿の東後方に百坪ほどの墓地が併設されているということ。
私の知る限り、単体の神社で、墓地を併する神社というのは珍しい。
決して広くはない墓地だが、新しい墓石も多く、
地域の人々が思いを込めて管理してある様子。
境内の西側は児童公園として整備されており、遊具も備えられている。
公園側にもいくつかの碑や大師堂がお祀りされていた。
公園側と本殿の間には、丁重に木枠で囲われた新しい石碑があり、
両脇に2メートルあまりの可愛らしいなぎの木。
石碑にはよる熊野本宮速玉大社に倣って、平成十六年に熊野大社より奉納の苗木とのこと。
やはりここは熊野なのだと満足して帰途に就く。
由緒:
「藤ヶ谷新田の鎮守である熊野・天神両社は、
初め熊野神社が江戸時代中期の享保年間に紀伊の熊野神社から分座され、
のちに天神社が合祀されたといわれています。
現在の本殿は昭和四年の再建でこの時拝殿も修理されています。
(平成三年三月沼南町教育委員会)」
「昭和四十七年十二月 熊野神社改修
昭和四十八年四月 青年館建設
昭和四十八年十月 柔道場
昭和四十九年四月 共同墓地新設
沼南町長島村洪一郎謹書「和合之碑」より)」