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近藤ようこ『水鏡綺譚』青林工芸舎

中世の物語のような

 中世の物語のようなマンガ。
 傑作です。作者自身が「自分の仕事の中で一番好きな漫画だった」と述べています。12年の中断を経て完結させました。
 中世の物語の世界を描かせたら、この人の右に出る者はいないのではないか、と思います。

 赤子のときに捨てられ、狼と行者に育てられた少年、ワタル。
 野盗にさらわれ、魂を何処かにおいてきた少女、鏡子(かがみこ)。
 ふたりは、鏡子の家と魂とを探して旅をする。

 第七話「白比丘尼」。
 登場する比丘尼は、熊野権現の護符や女人を救う『血盆経』を授け、地獄めぐりを語り、色を売る、熊野比丘尼

 白比丘尼がワタルに言う。
「この娘が知恵を持った時 おまえたちは別れ別れになるであろう」

 何かを得て何かを失う物語。

 

 近藤ようこさんは説経『小栗判官』を漫画化し、また説経『しんとく丸』も『妖霊星』と題して漫画化しています。

 読んだことはないのですが、『夕顔』という作品にも、熊野比丘尼が登場するそうです。

(てつ)

2010.2.14 UP
2021.3.27 更新

近藤ようこさんの著作