■ 熊野の説話

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◆ 熊野の本地1 熊野十二所権現


 『神道集』巻二の六、「熊野権現の事」より。

 そもそも熊野権現と申すのは、役の行者・婆羅門僧正が真の本地そのままを信仰されたのである。
 およそ熊野権現の縁起を見ると、昔、甲寅の年、唐の霊山から天台山にある王子晋(おうししん)という仙人の旧跡を慕って、日本の鎮西豊前の国の英彦山(ひこさん)に天からくだりなさった。その形は八角形の水晶の石である。高さは3尺6寸。その後、あちこちに御在所を求めて長い年月を送って後に、まぎれもない熊野権現として顕われなさった。日本の人皇の始め、神武天皇の治世76年の間、43年目の壬寅の年のことである。

 その後、仏法はいまだ本朝へ渡らず、仏法が渡ってきてからも上代においては熊野権現の存在はまだ幽かな状態のままであった。年月が300余年を経てのち、40数代目の天皇のころに、役の行者・婆羅門僧正らが参詣してのち、その御本地を顕わしなさったのである。

 このようなわけで、熊野十二所権現のうち、まず三所権現と申すのは、
 証誠(しょうじょう)権現は、本地阿弥陀如来である。両所権現は、・・・

 以下、次々と神の名をあげ、その本地仏を並べあげているので、表で示します。
 

本地
十二所権現 三所権現 証誠権現 阿弥陀如来
両所権現 中の御前 薬師如来
西の御前 千手観音
五所王子 若一王子 十一面観音
禅師の宮 十一面観音
聖の宮 龍樹
(ちご)の宮 如意輪観音
子守の宮 請観音
四所明神 一万十万 千手・普賢・文殊
十五所 釈迦如来
飛行夜叉 不動尊
米持(よなもち)権現 愛染王or毘沙門

 三所権現・五所王子・四所明神、あわせて熊野十二所権現。三所権現のうち、証誠権現が本宮、中の御前が新宮速玉、西の御前が那智の神様です。本宮・新宮・那智がそれぞれに共通に三所権現を祀っています。
 この他に、道中には八十四所の王子の宮(いわゆる熊野九十九王子)が立っているとか、

本地
那智の滝本 飛滝権現 千手
新宮神蔵(かんのくら) 毘沙門天王or愛染王
雷電八大金剛童子 弥勒
阿須賀大行事(あすかだいぎょうじ) 七仏薬師

 これだけの神とその本地仏の名をあげています(熊野十二所権現については資料によってわずかに異同があります)。

 そもそも、熊野権現が顕われなさった神武天皇壬寅の年より今年延文(北朝の後光厳天皇の年号)3年戊戌(つちのえいぬ)に至るまで1981年である。

 金峰山(きんぷせん)の象王(ざおう)権現は38所である。本地は未来の導師・弥勒菩薩である。勝手の宮は不動尊、子守の宮は毘沙門天である(これは吉野の蔵王権現の説明。吉野と熊野は大峰で結ばれる)
 また、熊野権現は年籠り(大晦日の夜、寺社に詣でて行う忌み籠り)ということを第一の行事とした。この権現は天照大神のころの人であるが、示現された土地は全国に広くゆきわたっている。他の国の名を挙げていうことができないほど多いのである。

 今現在のことでいえば、熊野神社は、北は北海道から南は沖縄まで全国に3000社以上あります。みなさんのご近所にもおそらくあるのではないでしょうか。

 このお話、まだまだ続きますが、今回はここまで。次回から、いよいよ熊野権現の前世譚が語られます。

(てつ)

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 ◆ 参考文献

西尾光一・貴志正造 編 鑑賞日本古典文学第23巻『中世説話集 古今著聞集・発心集・神道集』角川書店

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■熊野の本地
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