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◆ 栗田勇『一遍上人―旅の思索者―』新潮文庫


レビュアー:てつ(2004.8.30 UP)

 南北朝から室町時代にかけて熊野信仰を盛り上げていったのは、時衆(のちに時宗)という仏教の一派でした。
 時衆とは、一遍上人(いっぺんしょうにん。1239〜1289)を開祖とし、鎌倉中期から室町時代にかけて日本全土に熱狂の渦を巻き起こした浄土教系の新仏教です。

 時衆の念仏聖たちは南北朝から室町時代にかけて熊野の勧進権を独占し、説経『小栗判官』などを通して熊野の聖なるイメージを広く庶民に伝え、それまで皇族や貴族などの上流階級のものであった熊野信仰を庶民にまで広めていったのでした。

 時衆の念仏聖たちは熊野を特別な聖なる場所と認識していました。
 それは、熊野本宮が、時衆の開祖とされる一遍上人がある種の宗教的な覚醒に到った場所だからです。

 本書は、死に臨んで所持するすべての記録を焼き払った一遍上人の思想を知るための、ほとんど唯一の資料といえる国宝の絵巻物『一遍聖絵』から一遍上人の跡をたどり、一遍の生涯や思想を明らかにする1冊です。私が知る一遍本のうちでは最高傑作。
 芸術選奨文部大臣賞受賞。

(てつ)

一遍上人―旅の思索者 (新潮文庫)
一遍上人―旅の思索者 (新潮文庫)栗田 勇

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