蟻の行列にたとえられた熊野詣
「蟻の熊野詣」という言葉があります。熊野詣する人が蟻の行列のように続いたということですが、古くは「蟻の熊野参り」というのが一般的でした。
「蟻の熊野参り」という言葉が文献上初めて登場するのは、1603年(慶長8年)にイエズス会が刊行した『日葡辞書』。「Ari」の項に次のようにあるそうです。
Arino cumano mairi fodo tcuzzuitayo.
蟻の熊野参りほど続いたよ。
近世初頭、「蟻の熊野参り」は、蟻ほどたくさんいるという意味の諺となっていました。
南方熊楠は次のように書いています。
これ『塩尻』巻四六に、中古吉野初瀬
詣 で衰えて熊野参り繁昌し、王公已下 道者の往来絶えず、したがって蟻 が一道を行きてやまざるを熊野参りに比したとあり。今も南紀の小児、蟻を見れば「蟻もダンナもよってこい、熊野参りにしょうら」と唱うるは、昔熊野参り引きも切らざりし事、蟻群の行列際限を見ざるようだったに基づく。
蟻の行列のように続いた参詣者。大勢の人々が熊野を目指して歩きました。
(てつ)
2009.8.16 UP