鎌倉時代の仏教説話集『沙石集』に収められた「学生ノ見ノ僻タル事」という話に、「熊野の道にも百味」というフレーズがあります。
百味とは様々な味、様々な食べ物という意味ですが、「熊野の道にも百味」でどういう意味になるのでしょうか。
(上略)塩売りが来て「塩をお買いください」と言う。
寺の住持は「まことに塩は大切なものである。だから『熊野の道にも百味』といって、あらゆる食べ物の香りと味の基本は塩にこそある」と言って、「塩を買おう」と言った。(下略)
抜き出して現代語訳した箇所から判断すると、百味は様々な食べ物という意味ではなく、様々な味という意味のように思います。
「熊野詣の道中ではたくさんの種類の食べ物を食べることはできないけれども、それでも塩加減で様々な味にすることができる」ということでしょうか。
『沙石集』は全10巻。「学生ノ見ノ僻タル事」は巻第5の本巻に収められた第6話。巻第5は本巻が1巻、別巻が3巻。
(てつ)
2005.8.1 UP
2020.3.29 更新
参考文献
- 日本古典文学大系『沙石集』岩波書店
- 新編日本古典文学全集 (52)『沙石集』小学館
リンク