コダマ
熊野に伝わるコダマ伝説。
奥山で遭難し亡くなった死者の霊魂が供養されずにさまようとき、死者が大人であればダルになり子供であればコダマになるという。
コダマは滅多に姿を現さないが、移動するときには木々の枝を激しく揺り動かす。風もないのにざわざわと木々の葉が音を立て、またハラハラと葉が落ちるときはコダマがそこを通っているのだ。
コダマは人の子供の霊ではなく、年を経た木の魂魄であるともいう。
サトリ
コダマが姿を現わすのは、山の深いところで他に人がいないときだけである。とりつかれた人が男であれば少年、女であれば少女の姿で突如、前方から現われる。
コダマが少年少女の姿で現われたのをサトリという。人の心を読んで、人が心の中で思っていることを言ったり、人が言おうとしていることを先に言ったりして人を惑わす。
コダマは滅多に姿を現わさないが、姿を現わさないときにも言葉を投げ返して来るのでとりつかれたことがわかる。山に迷った人が「助けて」と声を出せば、コダマも「助けて」と答える。コダマの数が多いときはその数だけ声が響き渡る。
コダマは、その取りつかれた人が悪人であれば悪霊となり、善人となれば善霊となる。山に迷ったとき、コダマに助けを求めて祈り、声を上げれば、その声を里にまで響き伝え、助かることがある。
(てつ)
2010.4.13 UP
参考文献
- みえ熊野学研究会編『熊野の文学と伝承』