かつて熊野に巨大な火山があった
熊野にはかつて巨大な火山がありました。
その火山は1400万年前に多量の火砕流を噴出、空洞化した地下に地表が落ち込み、巨大なカルデラを形成し、カルデラ火山となりました。
カルデラとは火山活動によってできた大きな凹地のこと。熊野の巨大カルデラの規模は長径約41km、短径約23kmと推定されます。日本最大のカルデラである屈斜路カルデラ(長径約26km、短径約20km)をはるかに越える巨大さ。
熊野カルデラ火山の地下内部ではマグマが上昇し火成岩の岩体を形成。その後の風化・浸食によりカルデラの地形は留めていませんが、熊野カルデラ火山の火山活動の痕跡は今の熊野のそこかしこで見ることができます。
神戸大学名誉教授、巽好幸氏らの研究によれば、この時の噴火によって噴出し、堆積した火山灰の厚さは、約2000m以上になったという(火山灰は風雨によって侵食され尽くしている)。この噴火のため、地球全体の気温は10℃以上低下し、大量絶滅が起きた。実際に、約1500万年前~1400万年前には、地球上で大量絶滅が起こった事が知られている。また、この噴火は、約7万4000年前に起こったトバカルデラの破局的噴火(噴出物の総量は2800㎦ DRE)や、イエローストーン国立公園で起こった約210万年前の破局的噴火(噴出物の総量は939㎦ DRE)と並ぶ、地球史上でも最大規模に近い破局的噴火でもある。
世界に大量の死をもたらしたという世界最大級のカルデラ火山の火山活動がのちに熊野に聖地や景勝地を生み出したのです。
熊野カルデラ火山の火山活動の痕跡
聖地
景勝地
那智の滝がかかる崖は熊野カルデラ火山が生み出した岩体。神倉神社のゴトビキ岩も、熊野速玉大社の例大祭「御船祭(みふねまつり)」で祭礼の場となる御船島も熊野カルデラ火山が生み出した岩体。
和歌山県で唯一の「日本の地質百選」に選定された「古座川弧状岩脈」も熊野カルデラ火山が生み出した岩体(古座川の一枚岩や高池の虫喰岩、浦神の虫喰岩など)。
熊野の霊場も景勝地も熊野カルデラ火山が生み出したものなのです。
温泉についても地下深くにある熊野カルデラ火山が生み出した岩体が熱源になっているとの説が唱えられていましたが、現在では紀伊半島の下に沈み込んでいるフィリピン海プレートが熱源になっているとの説が唱えられています。
下の2枚の画像は、新宮市教育委員会と後誠介先生にご了承いただき、掲載させていただきました。ありがとうございます(※温泉の熱源が熊野カルデラ火山が生み出した岩体だと説が唱えられていたときの資料です)。
(てつ)
2010.12.21 UP
2011.2.18 更新
2012.7.27 更新
2019.7.12 更新
2021.4.18 更新
2021.4.19 更新
参考文献
- 『熊野地域文化検定 テキストブック 熊野検定』田辺商工会議所
- 熊野カルデラ - Wikipedia