熊野三山の造営・修造のための資金集めを担った組織
熊野本願所とは、熊野三山のなかに組織された寺院の総称です。
熊野三山が荘園を失い、参詣者も減り、経済基盤が揺るぎだした戦国時代の頃から江戸時代初期にかけて、熊野三山内の社殿堂塔の造営や修復のための資金集めを担ったのが熊野本願所です。熊野本願所は諸国を巡る熊野山伏や熊野比丘尼を統括し、各地を勧進(かんじん。社殿などの造営修復のために寄付を求めて歩くこと)してまわらせました。
本宮には本宮庵主1ヶ寺、新宮には新宮庵主1ヶ寺、那智には御前庵主・滝庵主・那智阿弥・春禅坊(大禅院)・行屋坊(理性院)・浜之宮補陀洛寺・妙法山阿弥陀寺の7ヶ寺があり、あわせて9ヶ寺が熊野九本願と呼ばれました。また新宮の摂社の神倉社には明王院・金蔵院・宝積院・宝蔵院・三学坊・泉養坊・妙心寺・大正院・不動院・泉良院の10ヶ寺がありました。
熊野三山の運営を基礎から支えた熊野本願所でしたが、江戸中期以降、幕府や紀州藩の政策によって熊野本願所はその権限を奪われて衰退していきました。
(てつ)
2008.3.27 UP
参考文献
- 熊野本願文書研究会『熊野本願所史料』清文堂出版
- 根井浄・山本殖生 編著『熊野比丘尼を絵解く』法蔵館
- 『国文学 解釈と鑑賞』869(平成15年10月号 ~特集「熊野学」へのアプローチ~)至文堂