熊野信仰を全国に広めた仏教の一派
南北朝から室町時代にかけて熊野信仰を盛り上げていったのは、時衆(のちに時宗)という仏教の一派でした。
時衆とは、一遍上人(いっぺんしょうにん。1239~1289)を開祖とし、鎌倉中期から室町時代にかけて日本全土に熱狂の渦を巻き起こした浄土教系の新仏教です。
時衆の念仏聖たちは南北朝から室町時代にかけて熊野の勧進権を独占し、説経『小栗判官』などを通して熊野の聖なるイメージを広く庶民に伝え、それまで皇族や貴族などの上流階級のものであった熊野信仰を庶民にまで広めていったのでした。
時衆の念仏聖たちは熊野を特別な聖なる場所と認識していました。
それは、熊野本宮が、時衆の開祖とされる一遍上人がある種の宗教的な覚醒に到った場所だからです。
(てつ)
2008.2.29 UP
参考文献
- 加藤隆久 編『熊野三山信仰事典』戎光祥出版