国の天然記念物として保護されるオオウナギの生息地
田辺市中辺路町と田辺市鮎川の境界から白浜町の河口までの富田川流域は、オオウナギの生息地として、国の天然記念物として保護されています。
「天然記念物大鰻生息地」と刻まれた石碑は、和歌山県西牟婁郡白浜町栄の富田川右岸にあります。
オオウナギは、ウナギ目ウナギ科に属する魚。ウナギとは別種の魚で、最大で全長2m・体重20kgに達します。
オオウナギの生息地のうち国の天然記念物に指定されているのは、熊野の富田川流域と、徳島県海部郡海陽町の母川流域、長崎県長崎市樺島の共同井戸の3カ所のみ。
オオウナギの剥製
大塔総合文化会館ロビーに展示されているオオウナギの剥製。
当時の記録では全長145cm、重量8.6kg。採集日は大正11年(1922年)11月27日。採集場所は和歌山県田辺市鮎川字向越の富田川。
大塔総合文化会館ロビーにはもう2つオオウナギの剥製が展示されています。
こちらの展示ケースに並べられた大小2つの剥製のうち大きいほうは当時の記録では全長6尺3寸(約191cm)、重量5貫600匁(約21kg)。日本最大級のオオウナギです。採集年は昭和5年ごろ、採集場所は和歌山県田辺市中辺路町の蕨尾橋上流の富田川。
この2つのオオウナギの剥製は昭和11年6月に大塔村鮎川に来られた東久邇宮稔彦殿下(ひがしくにのみやなるひこ:旧皇族、陸軍軍人。後に第43代内閣総理大臣に就任)に、 当時鮎川で旅館を経営していた佐々木賢一郎氏が「天然記念物日本一大鰻」として披露したものです。東久邇宮稔彦はその後、皇族出身者として初めて総理大臣に就任しました。
『紀伊続風土記』にあるオオウナギについての記述
江戸時代の紀伊国の地誌『紀伊続風土記』には富田川のオオウナギについての記述はありませんが、その代わりに古座川に生息するオオウナギについての記述があります。
胴回りは 7、8寸から尺回りのものが多い。最大のものに至っては2尺5、6寸回り。2尺5、6寸のものは体長は1丈ばかりであるという。最大のものは油が強くて食べることができず、またこれを炙ると油が多いので肉がみな融け、油となって流れるという。
三前郷:現・和歌山県東牟婁郡串本町/古座川町:『紀伊続風土記』現代語訳
1丈は約3m。古座川のオオウナギは最大のもので胴回り75~78cm、体長3mほどだと記されています。
近年の記録だと、古座川では2009年に体長1m、体重4kg、胴回り30cmの個体が捕獲されています。
(てつ)
2010.9.26 UP
2020.6.9 更新
2021.3.15 更新
2021.4.27 更新
参考文献
大鰻生息地の碑へ
アクセス:JR白浜駅から車で8分
駐車場:駐車場なし