太地のイルカ漁の実態を知る
太地町で15年にわたってイルカの行動学の研究してきた筆者の、太地のイルカ追い込み漁についての本。
太地のイルカ追い込み漁を叩く映画「THE COVE」(2010年にアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作)が話題になり、太地のイルカ漁の実態を知る筆者が居ても立ってもいられなくなって書き始めたのが本書です。
出漁から探鯨、追い込み、捕獲、解剖、流通にいたるまでの全体像を描き出しています。
イルカ追い込み漁は古式捕鯨の流れを汲む技術文化。反捕鯨団体の圧力が高まる中、イルカ追い込み漁を世界遺産にでも登録して保護する必要があるのではないか、と本書を読んで思いました。
欧米人と日本人の根本的な違いは、感謝の対象の違いなのだという指摘にはなるほどと思いました。
欧米人は食べ物を食べるとき、感謝する相手はキリスト教の神なのですね。太地の人達はイルカや鯨を捕らえて殺して食べる。だからイルカや鯨に感謝する。こういう思考を、文化を欧米人は理解できない。
しかし、理解できないから潰してしまおうというのは、間違っています。違うということを認めてなんとかつきあっていくしかない。
関口雄祐さんは「おわりに」で次のように書いています。
二十数名の小さな集団ではあるが、その背負う文化・歴史はとてつもなく大きい。そのことを、私は伝えなければならなかった。追い込み漁が叩かれるなら、私は義として立たなくてはならない。私にしか書くことができないことがここにはたくさんある。それを書くことがこの15年分の礼だ。イルカ追い込み漁を知ってもらいたい思いで書き始めた。
「THE COVE」を観た人には、ぜひとも読んでいただきたい1冊です。筆者の思いが伝わってきます。
第三回国際理解促進優良図書優秀賞(2011年)を受賞。
(てつ)
2008.1.12
2021.3.8 更新
関口雄祐さんの著作
イルカ漁についての本