花山院が那智の滝の滝壺に沈めた九穴のアワビ
『参考源平盛衰記』三「法皇熊野那智山御参詣事」より(『改定史籍集覧』)。
那智山に籠って修行していた花山法皇のもとに龍神が降り、如意宝珠・水精の念珠・九穴のアワビを献じた。
花山法皇は如意宝珠を岩屋に、念珠を千手院に納め、九穴のアワビは那智の滝の滝壺に沈めた。
九穴のアワビを食した者は不老長寿となり、滝の水を飲んだ者は延齢を得る。
白河上皇がこのアワビのことを聞き、滝壺を探させると、今なおアワビはあり、三尺ばかりの大きさであったという。
アワビについて
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アワビの殻の穴
龍神が花山院に献上したアワビは、殻に9個の穴がある特別なアワビ。通常アワビの穴は4〜5個。
アワビの殻の背面には数個の穴が並んでいる。この穴は鰓呼吸のために外套腔に吸い込んだ水や排泄物、卵や精子を放出するためのもので、殻の成長に従って順次形成された穴は古いものからふさがっていき、常に一定の範囲の数の穴が開いている。アワビではこの穴が4 - 5個なのに対し、トコブシでは6 - 8個の穴が開いている。
アワビの大きさ
白河院が見たときアワビは3尺(約90cm)ばかりの大きさであったという。
アワビの殻は、殻の内側全体から層が付加されて厚くなってゆき、成長した殻は長径5cmから20cm、短径3cmから17cm程度のおおよそ楕円形である。
参考源平盛衰記
『参考源平盛衰記』は徳川光圀(とくがわみつくに:水戸藩第2代藩主、水戸黄門)が史書『大日本史』を編纂する際の史料とするために編纂させたもの。
(てつ)
2005.8.4 UP
2022.7.19 更新
参考文献
- 『本宮町史 文化財編・古代中世史料編』
- アワビ - Wikipedia