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斬り伏せられても念仏を唱えていた男

気を失っても念仏を続けた湛増の墓守

 『古事談』四より(『新訂増補国史大系』)。 

 熊野別当湛増のもとに桂林房上座覚朝という武勇に優れた者がいた。湛増没後、五十歳を過ぎてからは念仏を深く信じ、弓矢を捨てた。

 承元三年(1209)、湛増の墓堂において七日間の別時念仏を修していた間のある夜のこと。
 犬がしきりに吠えるので、覚朝が様子を見に行くと、剣を抜いた者が二人待ち構えていた。
 覚朝は合掌していささかも動かず、念仏を唱えて、斬り伏せられた。覚朝は気を失ったが、それでも念仏の声は止まらなかった。

(てつ)

2005.7.29 UP
2022.7.18 更新

参考文献