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河童との約束

里人と河童との約束

 三重県熊野市飛鳥町の「くらもと」(熊野市飛鳥町小坂・平集落の大又川沿い)という地域に伝わる河童伝説。くらもとでは、河童は「ガロボシ」と呼ばれました。

 くらもとにはガロボシが出没した。ガロボシは里人や牛を川のなかに引き込んで溺死させたりするので恐れられた。

 ある年、庄屋の牛がくらもとの川原でガロボシに引き込まれているところを、平の人々が見つけてガロボシを捕らえた。
 ガロボシは「二度と悪さはしないので逃がしてくれ」と命乞いをするので、里人たちは「お前の好きなキュウリをこれからは作らないことにするから、お前も二度とこの里には出てくるな」と言い聞かせて川に放してやった。

 ガロボシは川の中程まで行くと里人の方を振り返り「忘れた頃にまた来るかもしれんぞ」と捨て台詞を残して水中に消えていった。後日、庄屋は二度とガロボシがこの里に出てこないように、経文をくらもとの川原に埋めたと伝わる。

 これ以降、平の人々はガロボシとの約束を守って誰一人キュウリを作らなかった。

時は流れ、1981年

 時が流れ、昭和55年(1980年)の秋、平に熊野市農協との契約栽培でキュウリを作る話が舞い込んだ。平の人々は何度も集まり相談し、ガロボシとの約束を破って、翌56年(1981年)の春からキュウリ栽培を始めることにした。

 ガロボシは平の人々に災いをなすことなく、人々は感謝し、川の石で「カッパ之碑」を建てた。

熊野の河童:熊野の説話

熊野の妖怪:熊野の説話

(てつ)

2010.4.8 UP

参考文献