み熊野ねっと 熊野の深みへ

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山の箸

山には箸を持って行かない

 昔は、山に弁当を持って出かけるときに箸を持っていかなかったそうです。だから、弁当を食べるときには、山の木で箸を作っていました。どんな木で作ってもよかったかというとそうではなくて、

 また、山で使った箸をそのまま捨ててしまうのはタブーでした。食べ終わったら、必ず箸をまっ二つに折ってから置いてくる(集落によっては2ケ所で折って、〔 のようにするところも)。
 そのまま置いてきてはいけない理由は、以下のように語られます。

 いずれにしても不思議な風習だと思います。


 なぜ昔は山に弁当を持っていくときに箸を持って行かずに山で作り、使った箸は折って山に置いてこなければならなかったのか。

 それは箸に邪悪な精霊が依り憑くのを防ぐため、ということのようです。

 『松原右樹遺稿 熊野の神々の風景』を読んで納得がいきました。

箸が単なる食事の道具にとどまらず、神や仏、生命の宿る小さな杖、柱であると意識された。…箸はさまざまな霊の宿る小さな柱である。…この依代としての機能があるため、どのような霊が依り憑くかも知れないと考え、熊野では山に箸を持って入ることを忌む風習が起きた。

(てつ)

2013.4.7 更新
2019.9.3 更新

参考文献