伊勢海老の本場は熊野です
大正から昭和にかけての文豪、佐藤春夫の随筆「熊野路」に、伊勢海老のことがこう書かれています。
海老は普通に伊勢海老と呼ばれてゐるが、あれは決して伊勢の海に産するのではなく、往昔、熊野で取つた海老を伊勢の大神宮に奉仕する御師が生きたままで運べるのが珍しいといふ思ひつきで京都へよくお土産に持つて行つたのが吉例になり、それが海を見たこともない都人に珍重されるあまり、伊勢人の土産ものといふので伊勢海老、伊勢海老と呼ばれるに至つただけのもので産地はやはり熊野であると熊野では言つてゐる。
(『定本佐藤春夫全集第21巻 評論・随筆3』臨川書店、167頁)
現在でも和歌山県の伊勢海老の漁獲高は高く、千葉県と日本一を争うほど。熊野はじつは伊勢海老漁の本場なのです。
(てつ)
2020.11.20 更新
参考文献
- 『定本 佐藤春夫全集 第21巻(評論・随筆3)』臨川書店
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