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◆ 弁慶産屋の楠跡(べんけいうぶやのくすあと)  三重県南牟婁郡紀宝町鮒田  鮒田村:紀伊続風土記(現代語訳)


武蔵坊弁慶生誕の地

弁慶産他の楠跡 弁慶産屋の楠跡:

 熊野別当(くまのべっとう。熊野三山の統轄者)の子とされる武蔵坊弁慶
 その生誕の地と伝えられる場所が三重県南牟婁郡紀宝町鮒田(ふなだ)にあり、そこには「弁慶産屋之楠」と刻まれた石碑が建てられています。

 弁慶が生まれたとされる屋敷の庭には大きな楠が生えていました。

 その楠は「弁慶産屋の楠」と呼ばれていましたが、1795年(寛政7年)に焼失してしまい、その後、1854年(嘉永7年)にその跡地に石碑が建てられ、弁慶生誕の伝説を伝えてきました。

 『紀伊続風土記』の鮒田村の項には以下のように記されています(現代語訳てつ)。

産屋楠
村端の川辺にある。高さ13間、周囲9尋。土地の人は弁慶産屋の柱と呼び、弁慶がこの地で生い立ったという。また一説では鈴木氏の先祖が植え置いたともいう。その大樹の大きな洞になった洞中で9梯を振り回しても邪魔する所がないという。乞児がその中に住んで飯など炊いたが、過ってその樹に燃え付いて、ついに枯れたという。惜しむべきことだ。寛政7年のことだとか。

 楠にあった大きな洞で弁慶は生まれたという伝説もあるようです。

弁慶温泉

 弁慶温泉という看板がありました。温泉施設があるわけではなく、ホースから水が流れ出ているだけです。

弁慶温泉

 出ている水に触れてみたところ、温かくはなかったです。
 何かの成分が多く含まれているのか、それとも温度が25度以上なのか。詳しいことはわかりませんでした。

 『紀伊続風土記』の鮒田村の項に「弁慶産湯」というのがあります(現代語訳てつ)。

弁慶産湯 
矢筈滝の下にある。岩間からわずかに湧き出る。古老は伝では、弁慶が鮒田で産まれたとき産湯に用いたためこの名があるとか(弁慶は田辺で生まれたとはいう。田辺城の条に出ている。いずれも正しいことはわからない)。

 この弁慶産湯は湯谷という谷の中にあるのですが、弁慶温泉はこれと関係があるのでしょうか。

 ◆ 参考文献

中瀬喜陽『説話世界の熊野 弁慶の土壌』日本エディタースクール出版部
『紀伊続風土記』臨川書店

 

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(てつ)

2003.11.18 UP
2013.7.30 更新


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