満洲国の物語、熊野本宮の申し子・植芝盛平が登場
舞台は第二次世界大戦前夜の日本軍の陰謀渦巻く昭和10年代の満州国。
熊野は舞台として登場しないが、熊野本宮の申し子である人物が登場する。
傑作だと思う。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』以上に多くの人に読まれるべき本だと思う。
いきなりトロツキーが登場し、石原莞爾、甘粕正彦、東上英機らが登場する。昭和史をほとんど勉強していない私でも名前だけは知っている実在の人物が描かれる。
石原莞爾の構想のもとに満州国に創設された建国大学。建学の理念は「五族協和の実現」。満州をあらゆる民族が平等・自由に暮らせる国にするという理想にしたがってこの大学には五族(漢・満・蒙・朝・日)の青年が集められ、教授陣にも中国開明派の鮑明鈴・蘚益信、朝鮮の独立運動家の崔南善らが招かれた。トロツキーやガンジーも招聘リストにあった。
その大学の学生となったウムボルトという名の日蒙の混血児の若者が主人公。ウムボルトの前に植芝盛平(うえしばもりへい。1883~1969)が建国大学合気道部顧問として登場する。植芝盛平は生きながら伝説となった武道の達人、合気道の開祖。
この植芝盛平が熊野本宮に両親が祈願して授かった熊野本宮の申し子であった。口熊野・田辺の出身で、お墓も田辺の高山寺にある。
植芝盛平の技は凄まじい。石原莞爾のボディガードとしても活躍する。
それにしても、私は満州のことを全然知らなかったのだなあと実感した。ほんと、ただ満州という名前を知っているだけだったのだなあ。
もっとちゃんと学校で教えるべきだと思う。
(てつ)
2005.9.28 UP
2020.8.20 更新
安彦良和さんの著作
『虹色のトロツキー』『王道の狗』『天の血脈』の3作が安彦近代史3部作と称されます。