花の窟から迎え入れた熊野本宮の神々
熊野本宮大社の神々は花の窟(三重県熊野市有馬町)から来たのだという伝承があります。
昔、花の窟に神々がおいでになったとき、本宮から迎えの者が7度も花の窟を訪ねてお越しを願ったが、神々はお聞き入れにならず、本宮にいらしていただけなかった。あきらめずに8度目のお願いにあがると、途中で本宮にお越しになられる神々と出会い、お迎えすることができたという。
イザナミをお迎えする故事を表す本宮祭
熊野本宮大社では例大祭・本宮祭は主祭神であるスサノオが母であるイザナミを花の窟から本宮にお迎えした故事を表しているといわれます。複数の神々ではなくイザナミだけを花の窟からお迎えしたとのことです。
例大祭では挑花(ちょうばな)と呼ばれる菊の造花が飾られますが、挑花も花の窟でのイザナミの祭り方に由来すると考えられます。『日本書紀』には「一書に曰く」として次のようなことが書かれています。
イザナミノミコトは、火の神を生むときに、陰部に大火傷を負って死んでしまう。その遺体は紀伊国の熊野の有馬村に葬られる。村人は、この神の魂を祭るのに、花のときは花をもって祭り、鼓・笛・幡旗をもって歌ったり舞ったりして祭る。
また例大祭では氏子子弟による大和舞が奉納されますが、この舞いのときに歌われるのが「有馬の窟(いわや)の歌」と「花の窟の歌」。どちらも花の窟についての歌です。
有馬の窟の歌
有馬や祭は花の幟立て笛に鼓に 歌ひ舞ひ 歌ひ舞ひ
(ありまや まつりは はたたてて ふえにつづみに うたひまひ うたひまひ)
花の窟の歌
花のや岩屋は神の岩屋ぞ祝へや子供 祝へ子等 祝へ子等
(はなのや いはやは かみのいはやぞ いはへやこども いはへこら いはへこら)
熊野本宮は花の窟と深い繋がりがあります。
(てつ)
2009.8.7 UP
2021.4.2 更新
2021.4.4 更新
参考文献
- くまの文庫2『熊野中辺路 伝説(上)』熊野中辺路刊行会