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熊野本宮大社例大祭・本宮祭(くまのほんぐうたいしゃれいたいさい・ほんぐうまつり)

 和歌山県田辺市本宮町本宮 本宮:紀伊続風土記(現代語訳) 本宮村:紀伊続風土記(現代語訳)

熊野本宮の最も大きなお祭り


4月13日の宮渡神事

 熊野本宮大社で行われるもっとも大きな祭りが春の例大祭です。

4月13日

湯登神事

 例大祭は4月13日の「湯登神事」に始まります。父親の肩車に乗った小鼓を抱いた小鼓を抱いた稚児(2、3歳の男の子)を中心に神職、修験者、伶人(楽を奏する人)、氏子総代など40~50人が午前9時半、本殿前で稚児による八撥神事(やさばきしんじ)などを行った後、出発し、旧JRバス本宮駅まで太鼓を打ちならし、氏子総代が神歌を歌いながら、練り歩きます(本宮祭で歌われる歌)。

 神は稚児の頭に宿るとされ、神事の際以外は稚児を地面に降ろしてはならず、移動の際は父親が肩車をしていなければなりません。

 八發神事では、稚児を地面に敷いた茣蓙に下ろし(あるいは肩車のまま、あるいは胸に抱いて)、笛と太鼓と氏子総代の「さがりやそう」「あがりやそう」「さがりやそう」の掛け声に合わせて、父親が左(時計回り)に3回、右(反時計回り)に3回、左に3回まわします。稚児に神を憑依させる所作といわれていますが、ぐずって泣き出したりする稚児がでて大変なときもあります。

 駅からはバスで湯の峰へ。湯の峰では、老舗旅館の温泉で沐浴潔斎し、昼食をとります(「あづまや」という旅館が奉仕しています)。その後、午後1時、湯の峰を行列をなして出発。湯の峰王子にて八撥神事。

 熊野古道・大日越で山を越えて本宮へ。途中、南無阿弥陀仏と彫られた石碑と鼻欠け地蔵で修験者が読経を行います。

湯登神事
月見岡神社での八發神事

 山中の月見岡神社で再び八發神事を行います。修験者は隣の大日堂の前で読経を行います。

湯登神事
札の辻での奉告

 山越えを終えて、熊野本宮本来の入口であった旧社地・大斎原の西の鳥居のある「札の辻」と呼ばれる場所から大斎原に向かって明日の祭礼を奉告して解散。

宮渡神事

熊野本宮大社例大祭

 夕方午後5時からは「宮渡神事」。拝殿前で八發神事の後、大斎原へ。大斎原で八發神事。暗くなってくるので、提灯に火を灯して末社の真名井社へ。真名井社でも八發神事。その後、大社鳥居前で解散。

熊野本宮大社例大祭

2013年の宮渡神事の模様

4月14日

 14日は「船玉大祭」と「前夜祭」。「船玉大祭」は、航海安全と大漁満足を祈念する漁業・造船関係者の祭典。「前夜祭」は神職だけの神事。

4月15日

 15日は、午前9時(たしか2014年までは8時からでした)から「本殿祭」、午後1時から「渡御祭」、午後2時頃から「御田祭(おんださい)」、午後4時頃から「還御祭」が行われます。

本殿祭

 本殿前で神事が執り行なわれ、数百人の参列者全員による玉串奉奠も行われます。

渡御祭

 午後1時からの「渡御祭」が始まります。13日のメンバーに天狗、旗、挑花(ちょうばな:挑の字は「掲げる」「担ぐ」の意、豊穣の母神・熊野夫須美大神に捧げる菊の造花)、御輿などが加わり、100人を越える行列で熊野本宮大社から真名井社を経て旧社地へお渡りします。

 本殿前で八撥神事などを行った後、出発し、真名井社へ。真名井社でも八發神事。その後、大斎原へ。

御田祭

 大斎原では午後2時頃から斎庭神事(さいていしんじ)「御田祭」が行われます。 御田祭の中核となるのが地元の幼稚園児や小学校低学年の子どもたちによる御田植神事(おたうえしんじ)ですが、その前に地元の少年少女(小学校高学年から中学1年生)による舞が奉納されます。

大和舞

 少年による大和舞のときに歌われるのが、「有馬の窟(いわや)の歌」「花の窟の歌」で、本宮が三重県熊野市有馬町にある花の窟と関わりを持っていることを示しています。

有馬の窟の歌

ありまや まつりは はなの はたたて ふえに つづみに うたひまひ うたひまひ

(有馬や 祭は 花の幟立て 笛に 鼓に 歌い舞い 歌い舞い)

花の窟の歌

はなの いはやは かみの いはやぞ いはへや こども いはへこら いはへこら

(花のや 岩屋は 神の 岩屋ぞ 祝えや 子供 祝え子等 祝え子等)

巫女舞

 大和舞のあとには少女による巫女舞が奉納されます。このときに歌われるのが「大直日の歌」。

大直日の歌
あはれえ あなおもしろ あなたのし あなさやけ おけあしめ おけおお
御田植神事

 舞の奉納に続いて御田植神事が行われます。4本の杭と注連縄で囲われて「神田」に見立てられた場所に、小学校低学年の子どもたち(鋤(すき)持ちの男子1名・朳(えぶり)持ちの男子1名、苗持ちの男子2名、榊を持った早乙女の女子数名)が「神田」の周りを時計回りに3周し、鋤(すき)持ち・朳(えぶり)持ちの男子が持った農具で田を耕す所作を行い、「神田」に早乙女の女子がサカキを投げ入れ、そののちに稲の苗を投げ入れて豊作を祈ります。このときに歌われる田歌。

あああおい くううもが さしでえたあよ しそうの ほしいかあな やよ ありや そや そやそやよ ありやそおやそお

(青い雲が差し出たよ しそうの星かな やよありや そやそやよ そやよ ありやそやそや

 秋の田を刈りわけゆけば 草葉の露に裾ぬれぬれぬ やよありや そやそやよ そやよ ありやそやそや)

 前節は意味がわかりませんが田植歌のようで、後節は田刈歌になっています。

八發神事

 御田植神事のあと八發神事が行われます。 本宮祭は子どもが主役の神事が多く、豊作と子どもの健康を祈るお祭りのようです。

採燈大護摩

 その後に熊野修験による護摩焚きが行われます。

投餅

 最後に餅まきで締めくくります。白と赤の餅があり、赤い餅を拾うと、挑花と引き換えることができます。この花を授かれば、1年災難なく過ごせ豊作であると伝えられます。餅まきが終了すると、一般の人々は三々五々散っていきます。

挑花
挑花

還御祭

 そののちに行われるのが「還御祭」。午後4時頃に八發神事などを行ったのち、大斎原を出発して大社に向かい、本殿前で再び八發神事などを行い、例大祭は終了します。

 なお行列は、13日も15日も、

歌 ならのはおととこがねのすずこそならしみかぐら やよありやそうやそ ありやそうやそう

囃 しらまゆみしらまゆみ やがていのりのかどをこそ

 という神歌を氏子総代が歌いながら進みます。

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トーク原稿「熊野や熊野本宮のスゴいところ、いろいろ」

(てつ)

2002.3.22 更新
2002.3.27 更新
2003.4.23 更新
2013.4.8 更新
2013.4.16 更新
2014.4.18 更新
2016.4.19 更新
2020.3.3 更新
2021.4.17 更新
2021.4.19 更新
2024.4.14 更新

参考文献

熊野本宮大社へ

アクセス
・ JR新宮駅から熊野交通バス奈良交通バス明光バス熊野古道スーパーエクスプレスで約1時間15分、本宮大社前バス停下車
・JR紀伊田辺駅から龍神バスで約2時間、本宮大社前バス停下車

駐車場:無料駐車場あり

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