1本1本釣り上げられた生のマグロ
和歌山県那智勝浦町にある勝浦港。
勝浦港は延縄(はえなわ)漁法による生鮮マグロの水揚げ日本一の漁港です。
延縄漁法とはマグロを1本1本釣り上げる漁法で、生きたまま船上へ釣り上げられたマグロは、漁師の手により船上で1本1本素早く活締めされ、血抜きされます。
そのまま自然死させられたものとは違って、活締めされたマグロは、味、鮮度ともに、とても良質です。
頭にある傷が活締めの跡。ここから延髄に螺旋状の針を入れて神経を破壊し、マグロを締めます。
まな板の上のマグロ。
このまま乱獲と水質汚染が進むと2048年までには天然の魚が食べられなくなるかもしれないという研究者の報告があるそうです。2048年なんてもうすぐ!
延縄漁法と、巻き網漁法では価値が違うと思います。環境、生物多様性の保護ということを考えた場合、延縄漁法で穫ったマグロの方が価値が高い。
狩猟民には、動物を狩るときに心になんらやましさを覚えることのない武器をもって戦わなければならないという倫理がありました。
魚の乱獲のことを考えると 、今の人間は圧倒的に強力な武器で魚に対峙しています。大型船の巻き網で魚群を一網打尽に穫るという漁法には強い規制をかけるべきなのではと思います。
現在マグロの漁獲の多くを占めるのが巻き網漁法によるもの。幼魚も成魚も関係なく魚群をごっそり一網打尽に穫るのが巻き網漁法です。持続可能性などは考慮しません。網の底の方で潰れたマグロは商品にならないので漁獲した2割程はその場で廃棄します。目先のことや自分のことだけを考えたら巻き網はとても効率的な漁法です。
しかしながら熊野勝浦は持続可能な漁法である延縄にこだわります。勝浦港に水揚げされるマグロは100%、延縄によるもの。はえ縄では成魚しか釣れません。
熊野人には巻き網を卑怯だと感じる感性があります。
熊野信仰のもともとの担い手は狩猟民であり(熊野の説話:熊野権現垂迹縁起)、大きな平野のない熊野地方では近代化されるまでは採集狩猟漁労文化が色濃く残っていました。
狩猟民には、動物を狩るときに心になんらやましさを覚えることのない武器をもって戦わなければならないという倫理がありました。巻き網はマグロにとってあまりに強大です。
動物に敬意を払う。必要以上に殺さない。殺した動物の体にも敬意を払う。これらも狩猟民の倫理です。
そうした精神性を近代化がなった後も熊野人たちは持ち続けてきました。
WWFが呼びかけた持続可能なマグロ資源の利用を促す署名に日本の企業として初めて賛同したのは熊野勝浦の水産加工会社です。
勝浦港の生マグロを独自の技術で冷凍した「海桜鮪」、生マグロの味わいをお手軽にご家庭で!
(てつ)
2010.10.13 UP
2012.4.18 更新
2015.5.7 更新
2020.3.26 更新