那智の浜近く、中辺路・大辺路・伊勢路の分岐点
那智の浜の近く、那智駅から徒歩5分ほどのところにある熊野三所大神社(くまのさんしょおおみわしゃ)。
この神社は、熊野詣が盛んだったころには、浜の宮王子とも渚宮王子、錦浦王子とも呼ばれ、熊野九十九王子のひとつで、中辺路・大辺路・伊勢路の分岐点となっていました。那智山参拝前にはこの王子で潮垢離を行って、身を清めたといわれています。
浜の宮王子前にあった森は「渚の森」と呼ばれ、和歌にも詠まれた名勝の森であったということです。現在はもう森はありませんが、大きく立派な数本の楠がかつてそこに森があったことを教えてくれます。
むらしぐれ いくしほ染めて わたつみの 渚の森の 色にいずらむ
(『続古今和歌集』 衣笠内大臣)
平安時代末の貴族、藤原宗忠(むねただ)の日記『中右記(ちゅうゆうき)』には、天仁2年(1109)10月27日条に「浜宮王子に参る(ここは南に海があり、景色がきわめて素晴らしい)」というようなことが記されています。
熊野三所大神社の隣には、浜の宮王子の守護寺であった補陀洛山寺があり、かつての熊野の神仏習合の名残を目にすることができます。
次の王子は市野々王子。
(てつ)
2008.11.24 UP
2020.9.10 更新
参考文献
- 加藤隆久 編『熊野三山信仰事典』戎光祥出版
- 梅原猛『日本の原郷 熊野』新潮社
- 宇治谷孟『日本書紀(上)全現代語訳』講談社学術文庫
浜の宮王子(現・熊野三所大神社)へ
アクセス:JR那智駅から徒歩3分
駐車場:無料駐車場あり