へいせいにじゅうさんねんど くまのなちたいしゃ れいたいさい 平成23年度 熊野那智大社 例大祭 |
平成23年7月14日、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町。晴天の中、 熊野那智大社 例大祭 (扇会式例祭。通称・那智の火祭り)が斎行されました。この日にむけて今月9日には御滝の上の注連縄が張り替えられたり、前日13日は宵宮で大和舞や田楽舞が奉納されました。この例大祭の意義について、当日頂いた「熊野那智大社例大祭諸行事案内」には
この祭典は、熊野那智大社の例大祭で毎年七月十四日(晴雨にかかわらず)斎行されます。別名「扇祭」・「那智の火祭り」とも申します。
神代の昔から人々は「水」を万物生成の根源と尊び、神武天皇御東征のみぎり、この「那智の御滝」を敬仰し神として尊び崇め、仁徳天皇五年(三一七年)の御代に改めて那智山の中腹に社殿を造営、神々をお遷しになられました。
これが今日の「熊野那智大社」であり、「那智の御滝」は別宮「飛滝神社」となりました。「那智の火祭」はこの御遷宮・御鎮座をしのぶ神事であり、神霊を振い起し、万物の生成発展を祈る神事であります。
と記載されています。御本殿から熊野の御祭神十二神を、御滝の姿を現したという扇神輿にお乗せして御滝へ渡御し、また御本殿へ還御するので、お祭りの主役は赤く縦長の扇神輿です。この扇神輿を御滝前で清める大松明が登場する為、通称「那智の火祭り」と呼ばれています。
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午前十時 |
那智大社本殿にて「御本社大前の儀」。熊野の御祭神十二神への献饌、祝詞奏上、玉串奉納等、神事が斎行される。 |
十一時 |
那智大社境内の舞台にて、稚児によるお神楽「大和舞」の奉納。那智勝浦町・市野々小学校児童により舞われます。男の子1人による斎主舞(那瀑の歌)、女の子2人による巫女舞(大直日の歌)、男の子4人による沙庭舞(有馬窟の歌・花窟の歌)。用いられる笛は龍笛。 |
十一時三十分 |
大和舞と同じ舞台で、那智田楽保存会による「那智田楽」(国指定重要無形民俗文化財)の奉納。45分。
構成は編木(びんざさら)四人、腰太鼓四人、シテテン二人、舞台端に笛方(龍笛)と控。二十一節とシテテン舞の計二十二節から成り、約600年前・応永年間から伝わる芸能。
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十二時十五分 |
本殿前にて「御田植式」。龍笛、太鼓に合わせて御田植の歌をうたいながら、四角く敷いた筵の上を木製牛頭・カイガ・エブリ持ち、軍配扇を持った田長(検見)の検分、飯櫃が順に巡る。 |
午後一時 |
御本殿前にて「扇神輿渡御祭」。幅1メートル・長さ10メートルの扇神輿十二体が降神の儀の後に、蛇の着物に社紋入鉢巻の"扇指し"の人々に奉供され、宮司・祭員により発輿式が斎行される。 |
午後一時三十分 |
御本殿と御滝の間にある"伏拝"にて「伏拝み扇立神事」。扇神輿の第一扇から第十二扇までの扇を広げる様に、順番に立て起こして飾る。 |
一時五十分 |
御滝本にて一・二・三の使いが発進し、烏帽を冠った権宮司が、使いの持つ松明に火を点じて順番に使いを送り出す。 |
一時五十七分 |
御滝本にて「光ケ峰遥拝神事」。参道石段下の"光が峯遥拝石"のある場所で、烏帽を冠った権宮司が"結びの松明"を奉持し光ケ峰遥拝所にて献饌、古伝の神事(秘事)で遥拝行事をする。 |
二時 |
御滝前参道にて「御火行事」。一・二・三の使いが御滝へ帰り、使受け(使い請い役)と答礼の所作を行う。使いの役・使い受け役は御滝の「火所」(松明の火付場)に向い大松明に点火、十二体の大松明が順番に参道石段を上って扇神輿と出合い炎で清めながら円陣を作りつつ巡る。いわゆる「那智の火祭り」と呼ばれる所以はこの神事の松明が登場する場面の為。 |
二時十七分 |
御滝本前の広場にて「扇褒め神事」。龍笛と太鼓で"扇褒曲"が奉奏される中、烏帽を冠った権宮司の前に扇神輿十二体が整列し、権宮司は檜の「打松」を手にして神字を宙に描く秘事を行う。そして扇神輿の第八神鏡の部分を打つ。神事を終えた扇神輿は順番に御滝本前に飾り立てられる。 |
二時二十分 |
御滝前の斎場にて「御滝本大前の儀」。雅楽が奉奏される中、献饌・祝詞奏上・玉串奉納等。 |
二時五十分 |
御滝本にて「田刈式」。那智大社御本殿前で斎行された田植式に続く内容。龍笛と太鼓に合わせて四角く敷かれた筵の上を、鎌を持って田刈歌を歌いながら田をめぐる。 |
二時五十五分 |
御滝本にて「那瀑舞」の奉納。松明の奉持者が白い装束のまま手に日の丸の扇子を持ち「けふのでましの あなあら貴と、 滝の流れも さらさらと 塵も残さず 神風ぞ吹く 神風ぞ吹く。」と、御滝御幸の歌を唱いながら舞う。 |
三時 |
御滝本から御本殿へ向けて「扇神輿還御」。御滝本での各神事を終え、元来た旧参道を扇神輿が御本殿に向けて還御する。 |
三時三十分 |
那智大社御本殿にて「扇神輿還御祭」。御滝本から御本殿へ扇神輿が還御し飾り立てられ、"昇神の神事"を受け、還御の奉告祭が斎行される。神事が終了すると扇指し役の方々により扇神輿が解体される。 |
参考文献:熊野那智大社例大祭諸行事案内、那智叢書 |
順を追った神事の内容は上記のように斎行されます。"火祭り"と呼ばれる午後の大松明の登場以外にも、午前中の大和舞(熊野本宮大社の例大祭と共通する旋律)、ユネスコ無形文化遺産の第2回国内提案候補に挙げられている「那智田楽」等の神事芸能、午後の扇神輿の渡御や扇褒め、田刈式や那瀑舞等、特色のある神事が数多く伝承されています。
例年は雨天が多かった熊野那智大社例大祭ですが今年は夏らしい晴天で、「千年万年、天晴れ天晴れ〜!!」と言う田刈式の田長の言葉もいつもより一層、御滝前に晴れやかに響き渡っていました。
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