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平野啓一郎『一月物語』新潮文庫

熊野詣の道中での怪異

 明治三十年初夏、熊野本宮を目指し、熊野古道「小辺路」を歩く青年。その道中での怪異。

 古めかしいような文体で書かれていますが、引き込まれて一気に読みました。泉鏡花や上田秋成のような感じの幻想小説です(上田秋成の『雨月物語』の、やはり熊野が舞台の「蛇姓の淫」は意識しているのかな)。

 熊野詣を題材に書かれた現代の作家の小説のなかでは、最高におもしろい作品なのではないかと思います。

(てつ)

2009.8.10 UP
2021.3.7 更新

平野啓一郎さんの著作

『日蝕』(1999年 芥川龍之介賞)

『決壊』(2009年 芸術選奨文部大臣新人賞受賞)

『ドーン』(2009年 Bunkamuraドゥマゴ文学賞)

『マチネの終わりに』(2017年 渡辺淳一文学賞)

『ある男』(2019年 読売文学賞)