熊野十二所権現(三所権現・五所王子・四所明神)
熊野の神々のことを熊野権現(くまのごんげん)と呼びます。
熊野三山(本宮・新宮・那智)のそれぞれの主祭神をまとめて呼ぶ場合は熊野三所権現といい、熊野三所権現と熊野三山に祀られる他の神々(五所王子・四所明神)を合わせて呼ぶ場合は熊野十二所権現といいます。
社殿 | 祭神 | 本地仏 | |||
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上四社 | 三所権現 | 第一殿 | 西御前 | 伊邪那美大神・熊野牟須美大神・事解之男神 | 千手観音 |
第二殿 | 中御前 | 伊邪那岐大神・速玉之男神 | 薬師如来 | ||
第三殿 | 證証殿 | 家津美御子大神 | 阿弥陀如来 | ||
五所王子 | 第四殿 | 若宮(若一王子) | 天照皇大神 | 十一面観音 | |
中四社 | 第五殿 | 禅児宮 | 忍穂耳命 | 地蔵菩薩 | |
第六殿 | 聖宮 | 瓊々杵尊命 | 龍樹菩薩 | ||
第七殿 | 児宮 | 彦穂々出見尊 | 如意輪観音 | ||
第八殿 | 子守宮 | 鸕鶿草葺不合命 | 聖観音 | ||
下四社 | 四所明神 | 第九殿 | 一万十万 | 軻遇突智命 | 文殊菩薩・普賢菩薩 |
第十殿 | 米持金剛 | 埴山姫命 | 毘沙門天 | ||
第十一殿 | 飛行夜叉 | 彌都波能賣命 | 不動明王 | ||
第十二殿 | 勧請十五所 | 稚産霊命 | 釈迦如来 |
中辺路の王子は、この熊野五所王子のうちの1体を祀ったもの。とくに熊野五所王子の5体すべての王子を祀ったものを五体王子といいます。
那智では「瀧宮」(飛瀧権現、祭神:大己貴命、本地仏:千手観音)を第一殿として、以下一殿ずつ繰り下げ、中四社・下四社の八神は相殿で第六殿に祀り、あわせて「十三所権現」としています。
神様の数が多いこと
熊野の神様はたくさんいらっしゃいます。
ひとまとめにして熊野十二所権現と呼ばれます。熊野の12柱の神々ということで、12柱ではありますが、そのうちの1柱は「一万宮十万宮」という神様で、それは一万眷属十万金剛童子。合わせて11万の神々を「一万宮十万宮」とまとめてお祀りしています。
また「勧請十五所」という神様もあり、よくわかりませんが、たぶん15柱の神々をまとめてお祭りしているのでしょう。
だとすると、一万宮十万宮の11万の神々と勧請十五所の15の神々をその数のまま数えれば熊野十二所権現は11万25柱の神々であるということになります。
熊野の人たちは多様性を尊重する精神性を持っていたのではないか。世界は多様なものから成り立つのだから、神様も多様でなければならないというような考え方を持っていたのではないかと私は考えています。
(てつ)
2008.12.10 UP
2019.7.11 更新
参考文献
- 加藤隆久 編『熊野三山信仰事典』神仏信仰事典シリーズ(5) 戎光祥出版