■ 熊野の本 | |||||||||
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◆ 武梨えり『かんなぎ』(1) REX COMICS(一迅社) |
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レビュアー:てつ ご神木の梛の大樹が伐られ、依代を失った産土神が、そのご神木を使って主人公の少年が作った木彫りの像を依代として美少女の姿で顕現したという。 神薙町(かんなぎちょう)という町が舞台で、その町の産土神がヒロインのマンガです。 このヒロインを祀っていた神社は、由来などは語られませんが、梛をご神木としていたので、熊野系の神社である可能性が高いと思われます。ですので、こちらのコーナーで取り上げることにしました。
しかし、この産土神は、土地神の象徴たる神樹という強力な依代を失い、神としての力のほとんどを失っています。 なので、神様というより、ちょっとした力をもつ魔法少女という感じなのですが、主人公の少年の協力を得て神薙町の平安を守るために活躍します。 ヒロインの名前は「ナギ」。高飛車なキャラですが、とてもかわいらしくて描かれていておもしろいです。 ギャグありシリアスありの楽しいマンガ。 |
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ご神木の梛は、区画整備のために近隣の神社に合祀されることとなって伐られたのですが、神社合祀のための神木・神林の伐採は、かつて熊野でも多々行なわれました。 明治39年に施行された1町村1社を原則とする神社合祀令。明治政府は記紀神話や延喜式神名帳に名のあるもの以外の神々を排滅することによって神道の純化を狙いました。熊野信仰は古来の自然崇拝に仏教や修験道などが混交して成り立った、ある意味「何でもあり」の宗教ですから、合祀の対象となりやすかったのでしょう。 村の小さな神社が廃止されただけでなく、歴代の上皇が熊野御幸の途上に参詣したという歴史のある熊野古道・中辺路の王子社までもが合祀され、廃社となりました。 五体王子のひとつとして格別の尊崇を受けた稲葉根王子や発心門王子でさえ合祀されたのです。小さな神社や王子社のほとんどが合祀され、神社林は伐採されました。 神社合祀の嵐が熊野に吹き荒れるなか、神社合祀反対運動に立ち上がったのが南方熊楠です。南方熊楠は下に示す8つの項目を理由に挙げて神社合祀に反対しました。 1 神社合祀で敬神思想を高めたりとは、政府当局が地方官公吏の書上(かきあげ)に瞞(だま)されおるの至りなり 2 神社合祀は民の和融を妨ぐ 3 合祀は地方を衰微せしむ 4 神社合祀は国民の慰安を奪い、人情を薄うし、風俗を害することおびただし 5 神社合祀は愛国心を損ずることおびただし 6 神社合祀は土地の治安と利益に大害あり 7 神社合祀は史蹟と古伝を滅却す 8 合祀は天然風景と天然記念物を亡滅す (『神社合祀に関する意見』より。口語訳はこちら) ナギは嘆きます。
熊楠は産土神の嘆きを聞いたのかもしれません。
「かんなぎ」ファンの方は、ぜひ熊野速玉大社へお参りください。熊野速玉大社の境内には日本最大の梛の木があります。また熊野速玉大社では「なぎまもり」というお守りも販売しています。 武梨えり『かんなぎ』6:熊野の本 (てつ) 2008.4.1 UP かんなぎ1ー目次 武梨えり&竹内崇コラボレーションピンナップ
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