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第6回熊野本宮盆踊り大会のために用意した原稿

熊野と一遍上人と盆踊り

2019年8月18日(日)に開催した第6回熊野本宮盆踊り大会のために準備した原稿です。熊野本宮大社旧社地大斎原にて開催。
盆踊り大会の休憩時間中に、10分ほど熊野のことや一遍上人や盆踊りについて話をさせていただきました。

熊野本宮盆踊り大会

日本第一大霊験所

熊野三山は「日本第一大霊験所」と言われます。日本第一の大霊験所、日本で一番霊験あらたかな場所という意味です。熊野三山は神様と仏様を一体にしてお祀りする神仏習合の霊場でした。本宮の神様は阿弥陀如来と一体で、本宮は阿弥陀如来の極楽浄土に見立てられました。そして本宮にお参りすれば極楽往生が確実になるとされました。お参りすれば極楽往生が約束されるなんてことができるのは本宮がまさに日本一の霊験所だったからです。

一遍上人に熊野本宮の神様から授けられた教え

そこにある石碑には南無阿弥陀仏と刻まれています。鎌倉時代の一遍上人というお坊さんが書いた文字を写して彫ったものです。今から745年前の夏に一遍上人は本宮にお参りしました。一遍上人は念仏札という南無阿弥陀仏と書かれたお札を配って歩く念仏布教の旅をしていました。当時の一遍上人には悩みがありました。念仏札を配るときに阿弥陀さまや念仏に信心のない人にどうしたらよいのか。一遍上人は夜通し本宮に籠り、夢うつつの中で本宮の神様から教えを授かりました。

その教えは「信不信を問わず、浄不浄を嫌わず、念仏札を渡しなさい」というものでした。念仏札を渡す相手に信心があろうがなかろうが、また不浄の者であろうが、気にすることなく、念仏札を渡しなさい。あらゆる人が阿弥陀如来の力によって極楽往生することはすでに決まっているので、信心があろうがなかろうが、人はただ素直に「南無阿弥陀仏」と唱えれば、それだけで極楽往生できるのだ、というのが本宮の神様の教えでした。この教えがきっかけとなって時宗という新しい仏教の一派が起こりました。時宗はその後、全国的に大流行して日本の文化に大きな影響を与えました。また熊野信仰も全国に広めてくれました。

盆踊りの原型

時宗の布教方法の1つの柱に踊念仏というものがありました。踊念仏は南無阿弥陀仏と念仏を唱えながら踊る踊りです。その時宗が行なった「踊念仏」が盆踊りの原型ではないかといわれています。もしそうであるならば熊野なしには時宗はないので、熊野なしには盆踊りもなかったということになります。神奈川県藤沢市に時宗の総本山の遊行寺というお寺がありますが、その遊行寺が盆踊りの発祥の地だともいわれています。その遊行寺よりもさらに深いレベルで、時宗の始まりという意味で、この熊野本宮も盆踊り発祥の地なのだということができます。ある意味でここが盆踊りの発祥の地だから、ここで盆踊りを踊るのです。

明治政府が日本から消し去ろうとした神仏習合と盆踊り

熊野信仰は明治時代に神仏分離によって破壊されました。また盆踊りも世界に恥を晒す風習だとして禁止されました。明治政府は神仏習合や盆踊りを日本から消し去ろうとしました。ですけれども、どちらも完全には消し去ることはできませんでした。盆踊りは今も日本人にもっとも親しまれている民俗芸能ですし、熊野は今では世界遺産にもなりました。

熊野が世界遺産に登録された理由

紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産になれたのは、神道と仏教のたぐいまれな融合が評価されたからです。それは東アジアにおける宗教文化の交流と発展を示すものでした。世界遺産はユネスコという国連の専門機関が行っている活動のひとつです。ユネスコの目的は、教育、科学、文化を通じて世界の平和と安全に貢献することです。そして、そのユネスコの活動である世界遺産も、その意義はもちろん世界の平和と安全への貢献にあります。ですので、世界遺産登録の上でも異文化間の交流ということが高く評価されます。

熊野信仰は、インドで生まれ中国・朝鮮を経て日本に伝来した仏教の影響を強く受けています。またヤタガラスの3本足も、中国の神話に登場する3本足のカラスが朝鮮を経て日本に伝わって、その影響を受けて、もともと大きなカラスであったヤタガラスが3本足のカラスになりました。熊野の神様の御由緒譚では熊野の神様は中国から飛んできたとか、あるいはインドから飛んできたとか外来の神様である来歴が語られます。

このような異文化の融合により形成された熊野信仰は明治時代には時代遅れの価値のないものとして否定されましたが、今では逆にその異文化の融合という部分が世界で高く評価されるようになりました。

熊野本宮盆踊り大会開催の目的

盆踊りもまた異文化の融合によりできたものです。もともと日本にあった祖先信仰(いま生きている人の生活に祖先の霊が影響を与えているんだという信仰)と、仏教とが融合してできたのが盆踊りです。

異文化の融合により栄えた神社の境内地で、異文化の融合によりできた仏教行事である盆踊りを踊るこの熊野本宮盆踊り大会は、ささやかな行事ではありますが、世界遺産の地で行う行事ですので、その大きな目的は世界の平和と安全への貢献にあります。

この後、小芝陽子さんが素晴らしい歌を披露してくださいます。その後は総踊りです。総踊りが始まりましたら、ぜひみなさま、踊りの輪に加わって踊りを楽しんでください。とくに観光でお越しのお客様、ぜひご参加ください。世界遺産であり、また盆踊り発祥の地ともいえるこの場所で盆踊りを踊れる、またとない機会です。これで私の話は終わります。ありがとうございました。

熊野本宮盆踊り大会

(てつ)

2019.8.19 UP

参考文献