■ 創作童話 |
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★ 我が輩は鵯(ヒヨドリ)である。(その4) (正和 作) |
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我が輩は鵯である。
6 甘夏 7 四村川 8 黄金蜘蛛 9 虫送り 10 お花淵 11 堤の池に沈んだ緋鯉 12 耳のお地蔵さん 13「しばのはち」の針金橋 14 ふけ田と四村川の小魚たち 15 無花果 16 2001年 17 山鳩 18 旅立ち。 我が輩は鵯である。(その4) (正和)
寒い北風が吹き、御主人夫妻も白菜や大根など野菜の手入れをするのも寒さが大変身体にこたえる様だが、お陰で我が輩達は暖かい純毛の服を着ているので寒さはあまり感じない。そうこうするうちに年も暮れて二十世紀最後の2000年のお正月が来ました。ピラカンサの実は真っ赤に色付き熟れて美味しくなり、お正月のご馳走です。 御主人は竹を切って来て家の門口に立てて、それに松の葉や榊の木、ゆずり葉を添えて蕾の膨らんだ梅の枝と、真っ赤な実がたわわに実った南天も飾って門松を立てました。そう言えば、父や母から聞いたことが有る。「この家の主人は正月が来れば必ず門松を立てて南天を飾るから、その実を頂戴したが、少しも怒らずに笑っているだけだった。有り難かったネエ」と話していた。嘘か?本当か? 早速試して見る事にする。 我が輩は翌朝御主人が起床すると、まず必ずと言っていい程、玄関の雨戸を開けてガラス戸を開いて外を眺めてから新聞を取り中に入る。そのときを見計らって我が輩はひと際大きな声でピーと鳴きながら南天の実を取って食べて、そっと御主人の顔を見た。「ピー助正月早々余り一度に食べて、お腹を壊すなよ」と、笑いながら家の中に消えて行った。確かに父や母の言った事は本当だった。 見れば雀君達やカワラヒワ君達も餌箱や巣箱に入れてもらったご馳走を賑やかに仲良く食べている。目白君は鳥籠の中に入ってさも我が家でござる、と言った顔で半分に割ってもらったミカンを啄んでいる。それを見ても我が輩は、もう欲しいと思わなくなったから不思議だ。 本当に平和な2000年のお正月だ。我が輩はすっかりこの里が、そして、この家が好きでたまらない様になった。又、暖かくなれば北の国に行かなければなりません。しかし、我が輩は考えました。夏をこの生き物ふれあいの里で過ごす事は出来ないだろうか? 真剣に考えた末にピー子さんに相談しました。 ピー子さんは「私もそれを考えていたのよ。少しは不安だけれど貴方と一緒だったら夏を越せると思うの。だってこの家の主人ご夫婦は優しい方だから雀さん達と同じように食糧のない時には、きっと助けてくれると思うわ」と、申しました。 そのうちに春が来て紅梅の枝では目白君が我が世の春とばかりに、蜜を吸いながら綺麗な声でさえずる頃に成りました。我が輩達もピラカンサの実は無くなったが、山茶花の蜜を飲んだり、人間様の作っているキャベツやブロッコリーの葉を頂戴したりしながらピー子さんとの生活を楽しんでいました。 やがて白百合の花の香る初夏が訪れて、山々は若葉の匂いでむせ返る頃に成りました。大勢のお友達も鶇(ツグミ)君も皆再開を約束して北の国に旅立って行きました。我が輩達二人は決心してここで夏を越す事にしました…… 果たして無事に冬を迎える事が出来るでしょうか? このお話は、私が最近知り合った本宮町に在住の正和さんという方の創作童話です。 皆地には皆地生き物ふれあいの里があります。 和歌山県田辺市本宮町皆地の観光名所 (てつ) 2009.5.21 UP
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