■ 創作童話

 み熊野トップ>創作

★ 我が輩は鵯(ヒヨドリ)である。(その6)   (正和 作)


 我が輩は鵯である。


我が輩は鵯である。(その6)       (正和)

 

   甘夏

だんだん暖かく成り横垣内(ヨコガイト)の後ろの茶畑の中にある、大きな甘夏の木と、家の前の花菖蒲の畑にある甘夏が枝も折れる位、たわわに実り、黄色く色付いて来ました。烏(カラス)君達もこれが欲しい様だが、皮が厚いので簡単に食べれないらしい。

ある日の夕方、茶畑から飛び立った烏君が口をいっぱいに開いて甘夏を丸ごと1個くわえて「上地(カミジ)」の在所の方に飛んで行った。我が輩はあまり物事には動じない方だが、これにはいささか驚いた。いくら「食いに釣られる」と言っても、よくまああれだけ重い物を持って。飛ぶ羽の力、そして落とさないでくわえているクチバシの力、所詮、我が輩には真似の出来ない芸当だ。いや我が輩達が一番尊敬する御主人様でも真似る事は不可能であろう。

それを眺めていた御主人様が何を思ったのか花菖蒲の畑の方に行ったので、ついて行って見ると、甘夏の木の下でなにやらゴソゴソしている。なにをしているのだろうと、その木の枝に飛んで行き、よく見れば、自然落果している甘夏を、いつも持っている肥後守のナイフで輪切りにして並べている。5個ほどあった全部5等分か4等分の輪切りにして並べ終えると、我が輩の顔を見てニコッと笑っている。そして、その場から少し離れて我が輩を見ている。

その顔は「早く食べなさいよ」と言っている様に見えたので、恐る恐る近付いて端の方の甘夏を一口食べてみた。一寸酸っぱいが、すごく美味しい。御主人様はニコニコと笑いながら、よしよし、と言う様にうなづいている。我が輩はすっかり嬉しくなり暑さも忘れて夢中でぱくついた。

そうだ。ピー子さんにも教えてあげなければ」と「祭り山」の我が家に帰っていた ピー子さんの所に一直線に飛んで行き、この事を話した。2人ですぐに甘夏の所に引き返して、大賑わいをしながら食べた。大食いのピー子さんも、5個分の甘夏はさすがに食べきれず「また夕食に頂くわ」と言って、遊びに出かけた。我が輩も、畑で草を取っている御主人様に、ピーと一声お礼を言ってから、ピー子さんと一緒に遊びに出かけた。

そう言ったような訳で食べ物にはあまり不自由はしないが、だんだん暑さが厳しくなってくるのには閉口する。

back next


 このお話は、私が最近知り合った本宮町に在住の正和さんという方の創作童話です。
 正和さんの許可を得て、こちらに転載させていただくこととなりました。
 今回のお話は、正和さんがお住まいの皆地(みなち)を舞台にした物語です。

 皆地には皆地生き物ふれあいの里があります。
 皆地いきものふれあいの里では、約20ヘクタールの敷地のなかに「ふけ田」と呼ばれる湿田や森林があり、約600種類もの動植物を観察することができるそうです。観察室、標本展示室を備えた「皆地いきものふれあいセンター」も併設。駐車場あり、入場無料。

和歌山県田辺市本宮町皆地の観光名所

(てつ)

2009.6.24 UP

 

Loading...
Loading...

楽天おすすめ

 


み熊野トップ>創作