熊野古道「赤木越(発心門王子~湯の峰温泉)」
リハビリをかねて熊野古道を歩きました。しばらく前までは松葉杖生活でしたので、遅いペースです。
今回歩いた「赤木越(発心門王子 → 湯の峰温泉)」は赤木越分岐からちょっときつい登り坂がありますが、それを登りきってしまえば、なだらかな尾根沿いの道となります。約7kmの2時間40分ほどのコースです。
普通の体力がある人であれば、問題なく歩くことができると思いますが、今の私にはきつかった。途中で膝が痛くなって休みました。
この後、1週間ほど膝が痛んで、歩くリハビリは山道を歩くのは止めて、犬の散歩だけにしました。
発心門王子 → 湯峯温泉(約7km;約2時間40分)
・発心門王子バス停↓(0.0km;0分)
・発心門王子
↓(0.8km;15分)
・猪鼻王子
↓(0.4km;7分)
・船玉神社
↓(1分)
・赤木越分岐
↓(2.2km;60分)
・なべわり地蔵
↓(1.2km;20分)
・柿原茶屋
↓(2.5km;50分)
・湯の峰温泉
・湯の峰温泉バス停
なおこの所要時間には休憩時間・見学時間・参拝時間などは含んでおりませんので、その点はご注意ください。
※アクセス
発心門王子(ほっしんもんおうじ)バス停までは本宮大社前バス停から発心門王子行きの龍神バス(1日7便)をご利用ください。
お車でお越しの方は本宮大社近くの駐車場に車を置き、バスで発心門王子までお越しください。
てつの熊野古道歩きレポート
2005.11.8(火)晴れ
まずは赤木越について。
熊野古道「中辺路」を歩いてきた場合、口熊野と奥熊野の境界が三越峠(みこしとうげ)となりますが、三越峠から本宮へは二つのルートがありました。
ひとつは、三越峠から発心門王子などを経由して本宮まで向かう中世の熊野御幸のルートで、これを本街道といいました。いま、普通に熊野古道「中辺路」といった場合、このルートを指します。
もうひとつのルートは、近世に利用されるようになったもので、三越峠から「赤木越(あかぎごえ)」で湯の峰温泉に到り、湯の峰温泉から「大日越」で本宮に向かうというルート。
これを裏街道といいましたが、現在は三越峠から献上(けんじょう。この地名は一遍上人に由来する)までの道が崩土で通行不能のため、船玉神社の近くまで本街道を利用し、そこから献上へ上がり、湯の峰へ向かうようにしています。
この裏街道は、那智山の如意輪堂(今の青岸渡寺)を第一番札所とする西国三十三ケ所観音巡礼が盛んになると、三十三ケ所観音巡礼のメインルートとなります。
西国三十三ケ所観音の巡礼者は伊勢参拝の後、「伊勢路」で新宮へ。新宮参拝の後、那智山を参拝し、「大雲取越・小雲取越」の険路を越えて本宮へ。本宮からは「大日越」で湯の峰へ。湯の峰からは「赤木越」で三越峠まで行き、そこからは「中辺路」で田辺まで行き、第二番札所の紀三井寺へ向かいました。
今回は発心門王子から赤木越分岐まで中辺路を田辺方面へ向い、赤木越分岐から湯の峰温泉まで赤木越を歩きました。
家から発心門王子まではみなさまの参考にはなりませんのでレポート省略。
みなさまは1日3便の発心門王子行きの龍神バス、1日1便の発心門王子行きの住民バス(べんりバス)またはタクシーをご利用ください。熊野本宮大社から発心門王子までの龍神バスの乗車時間はおよそ18分。運賃は450円(住民バスは乗車時間はおよそ25分、運賃は200円)。
午前9:00前に、発心門王子バス停に到着。発心門王子にお参り。
熊野九十九王子のうち、格別の崇敬を受けた王子の五体王子のひとつです。発心とは発菩提心(はつぼだいしん)、「仏道に入り、仏智を証する志をおこす」という意味の言葉です。
中世には、この近くに「発心門」と呼ばれた大鳥居がありました。
この大鳥居「発心門」が本宮の聖域の入り口であり、参詣者はこの大鳥居の前で祓いをして、その後、鳥居をくぐり、発心門王子に参りました。
ここから本宮までは2時間半ほどですが、今回は逆方向、田辺方面に赤木越分岐まで歩きます。
9:07、出発。鳥居をくぐり、土道の坂を下る。周囲は杉桧の人工林。
道端にはアサマリンドウの花。
9:12、61と書かれた木の道標がある。滝尻から500mごとに置かれた道標で、滝尻王子が1番。本宮大社の裏の鳥居のすぐ近くの祓戸王子に最後の75番がある。
9:18、林道(未舗装)に下りる。ここから少しの間、川のせせらぎを聞きながら平坦な林道を歩く。
9:23、案内板。林道下へ。林道の下に猪鼻王子がある。
9:25、60番の道標。
ここから再び林道へ登る。9:29、林道へ。
9:35、船玉神社。かたわらに歌碑が立つ。「献詠歌/病む老父(ちち)を負ひて詣でし秋熊野 音無川に紅葉(もみじ)映えゐし/熊代敦子」
船玉神社のすぐ近くに59番の道標、9:39。
9:40、赤木越分岐点。ここからやはり500mおきに木の道標がある。音無川に架かる鉄の橋を渡る。
昭和の時代に使われていたのと同じ形の川船が置いてあります。船玉神社は船の発祥の地と伝えられます。
トイレ。湯の峰までは途中トイレはありません。
9:45、丸太橋を渡る。
木の階段。周囲は杉桧の人工林。ここからしばらくつづら折れの登り坂が続く。
9:59、1番の道標。
10:03、まだ若い檜の人工林。この辺りから坂がゆるやかになる。
10:05、尾根に出る。左に行く。右は三越峠に行く本来の道だが、現在は通行不能。
なだらかな尾根道。この辺りが献上。ここにかつて茶屋があった。その献上という地名は一遍上人にちなむ。
一遍上人たちが通り過ぎようとするのを、茶屋の主人が引き止め、「お代は要らないから」と、茶屋へ上げ、もてなした。
上人が「この愚僧にこのようなもてなしをされてはもったいない」と言うと、「私共は修業のお坊様に献上するのを一番の楽しみとしています。それゆえに御仏の加護をいただき、このように家は繁昌、家内安全に送らせていただいているのです」との主人の言葉。上人は俗人に身をもって教えられていることを悟った。
「お坊様はどこへ参られるのですか」と主人が尋ねると、上人は「我等は相模の国藤沢山浄光寺(現・時宗総本山の清浄光寺(しょうじょうこうじ)。遊行寺(ゆぎょうじ)とも。神奈川県藤沢市)の愚僧です」と名乗った。
それで世の人は、名高い一遍上人に献上したということで、この家の家号と地名を「献上」と名づけ、その家はその後も長く続いているという。
道下は杉桧、道上には赤松などが生えている。松は枯れたものも多いので、強風の日には危険。
10:09、道端にタンクがある。ここから何kmも離れた集落へ飲料水を送っている。
10:14、 2番の道標。なだらかな尾根道。尾根筋は左右どちらかはだいたい天然林なので、変化があって気持ちよい。アセビ、ウバメガシ、コメツガなど。
10:24、3番の道標。10分で500m。時速3km。
10:33、4番の道標。
10:36、見晴らしのよい場所に出る。左手向かいの山に民家が数軒見える。あれは発心門(ほっしんぼ)の集落だろうか。右手にも民家が。あれは栗垣内(くりがいと)かな。
10:41、鍋破(なべわり)地蔵。これも一遍上人の伝説に由来する。
弟子が先に赤木越えの峠で上人を待ちながらご飯を炊いていると、ご飯が炊きあがらないうちに鍋の水がなくなっているのに気づき、慌てて水を汲みに行って帰ってきたら、鍋が割れて米も黒焦げになっていた。そこに後から発った一遍上人が追いつき、これも如来が与えたもうた試練かと、何も食べずに再び歩き始めた。このことからこの辺りは鍋割と呼ばれるようになった。
10:48、左手、木が小さく見晴らしがきく。小森の集落が見える。
10:50、5番の道標。
11:01、6番の道標。
11:07、三越県有林の看板。傍にお大師さまがある。ここを左に行くと久保野の集落に出る。
11:11、柿原茶屋跡。ここでちょっと休憩。ここに別の種類の1番の道標がある。この別の種類の道標に従うと、湯の峰ではなく本宮に行くようです。
11:17、茶屋跡の裏を登っていく。周囲は杉桧。
11:22、7番の道標。
11:30、国土地理院の四等三角点。
11:32、8番の道標。
11:41、9番の道標。
11:47、見晴らしのよい場所に出る。
11:52、防鹿ネットに囲まれた近年植えられたばかりの植林地。しばらくネット沿いに歩く。木が小さいので見晴らしがいい。
11:52、10番の道標。
11:56、車道が見える。湯の峰温泉まであともう少し。
12:00、正午の時報が聞こえる。12:02、ネット終わり。
12:05、11番の道標。
12:10、暗い人口林に入る。湯の峰に下りていく。
12:11、湯の峰の家屋の屋根が見える。
12:15、硫黄の匂いが届く。
12:19、民宿横の石段を降りる。
12:20、車道に下りる。傍に磨崖名号碑(伝一遍上人名号碑)がある。
12:24、湯の峰温泉バス停到着。
赤木越は、今の私にはけっこうきつかったです。
でも、尾根筋は道の左右どちらかは天然林の箇所が多くて、気持ちよく歩けました。
道しるべがあるので、道に迷うことはないと思いますが、地図を携帯されることをお忘れなく。
(てつ)
2005.11.20 UP
20209.3.23 更新
参考文献
- 観光案内所などに置かれている熊野古道のガイドマップ
- 宇江敏勝監修『熊野古道を歩く (歩く旅シリーズ)』山と渓谷社
- 『熊野古道公式完全ガイド―紀州和歌山県版』扶桑社ムック
発心門王子バス停へ
アクセス:
・本宮大社前バス停から発心門王子行きの龍神バス(1日7便)で約20分、終点下車